今月のコラム
このコーナーは、各地域で活動するJFNのスタッフ、および参加者が、交代で担当します。映像制作のスキルだけでなく、地域活性化、メディア教育、NPO運営、あるいは地域の話題や情報などについて、独自の視点で書き下ろします。
第1回 「コンテンツ」「地域」「完パケ」主義 松野良一
いよいよジャパンフィルムネットがスタートしました。今回は、北海道から沖縄まで、地域密着型の映像コンテンツ制作を行っている市民メディア4団体が参加することになりました。ネットワーク上で情報やコンテンツを交換することで、JFNに一体何が出来るのだろうかと期待は増すばかりです。
さて、市民メディアといえば、すでに多くの方々が全国で活動をされております。また、そうした活動を研究されている方もたくさんおられます。では、私たちは、そうした動きの中で、どういうスタンスを取るのか、何をポリシーにしているのか、少しばかり説明しておきたいと思います。
放送というのは「枠」を埋めるという概念です。しかし、映画は「作品」を創造するという概念です。ニュース番組とドキュメンタリー番組でも、同じようなことが言えます。私はTBS勤務時代に2つの番組を経験しましたが、ドキュメンタリーを制作する方が、1ディレクターとしてはるかに大きな満足感がありました。それだけではありません。追いかけたトピックスの面白さや内容、そして完成した映像の質にも、大きな差がありました。ニュース番組は、速報としての価値は大きいですが、どうしても「枠」を埋めなければならないという責任と限界があります。しかし、ドキュメンタリーを制作するという作業には、深い洞察とともに「作品」を創造しているという実感が伴うものです。
約7年間、あちこちの大学で学生や市民の方々に、映像制作を教える講座をやってきましたが、上記の理由で、私はドキュメンタリー制作にこだわり続けてきました。そしてとても驚いたことがあります。それは、プロには到底作ることができないすばらしい作品ができ上がって来ることがあるということです。私が関わった講座だけで100本以上の作品が制作され、うち30本近くがコンテストで入賞したり地上波で放送されたりしています。アイデンティティの拡散と統合を描いた学生の作品、とことん地域に生きる人を追いかけた作品、人類に共通の集合的無意識を探った作品など、視聴率競争に追われているテレビ局のディレクターには絶対に作れない作品がたくさん制作されてきました。
これらの作品に共通しているのは、1つの「作品」を制作するんだという「コンテンツ」主義。そして制作者が無理をせず、身近な場所、話題、生活、悩みなどを描く「地域」主義。さらに、流通可能なパッケージ作品として仕上げられているという「完パケ」(完全パッケージ)主義です。
私は、映像制作には、この「コンテンツ」「地域」「完パケ」主義が大事であると思います。それは、デジタル時代には流通させやすいから、という理由だけではありません制作者にとっても視聴者にとっても、プラスになるからです。作品は、制作者が面白い楽しいと思って作って初めて、質の高い作品ができます。「枠」の穴埋めのために責務で制作されている番組は、どれもこれもワンパターンで、ディレクターも視聴者も楽しくありません。
私たちは、この「コンテンツ」「地域」「完パケ」主義に、できる限りこだわり、これからも、さらに良質のコンテンツを制作していきたいと考えています。そして、全国のこどもからお年寄りまでが、手軽にメディア表現活動を楽しむことができる時代が来ればいいなと考えています。そのために、わずかばかりですが、お手伝いをさせていただきたいと考えております。あなたも、 世界にたった1つしかないオリジナル作品を、制作してみませんか?
第1回コラム執筆者 松野良一
TBS「報道特集」「スペースJ」「ニュースの森」ディレクター等を経て、2003年から中央大学総合政策学部助教授、博士(総合政策)、JFN代表
日本ジャーナリスト会議奨励賞、ギャラクシー賞月間賞などを受賞
|